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緋い魔女 Part 9

彼女の視界に何かがうつり込んだ。
ばさっ、と音を立てて現れた”それ”が、手に持った黒鉄色の大鎌(デスサイズ)を目の前の精霊に振りかざす。
突然の乱入者に驚いた精霊は、振り下ろされた刃が当たる前に姿を消した。
「…」
大鎌を抱えた”それ”は何もいなくなった雪原を見つめて立っていた。
「…お前、」
グレートヒェンはぽつりと呟く。
「…勝手に戻ったんじゃないのね」
”それ”は無言で振り向いた。
「…別に」
”それ”ことナツィは視線を逸らしながら答える。
「ただ…気になっただけ」
「ふーん。何それ」
グレートヒェンは鼻で笑う。
「まぁ良いわ、助けてもらったんだし…にしても」
彼女はナツィが持つ大鎌に目をやった。
「蝶がかたどられた鎌、ね…やっぱり、”黒い蝶”と呼ばれるだけあるわ」
それを聞くと、ナツィの手から大鎌が消えた。
「…なぁに、隠さなくたっていいのよ。お前の武器なのだから…とりあえず、帰るわよ」
もう寒いでしょう、と言って、グレートヒェンは元来た方に向かって歩き出した。
少し経ってから、ナツィは黙って彼女の後を歩き始めた。


「…という訳で件の精霊を見つけられたのだけど」
「…撤退した、と…」
まぁ仕方ないのよ、とグレートヒェンはテーブルの上に紅茶のカップを置きながら言う。
「もう辺りも暗くなり始めていたし、第一こちらもまだ準備が整っていなかった。―下手に抵抗するよりはマシだと思うのだけど」

  • 緋い魔女
  • まぁまぁ趣味出してます(笑)
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