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雪泥鴻爪

どうしようもない雪の嵐の中を進む
靴の裏からひしひしと冷たさが滲み出る
赤と青が混ざり合う視界
握っていたはずのあの娘がくれた木の枝も
いつしか落としていたようで

放送禁止の言葉が耳を突く
あの街から出なきゃいけなかった理由も
口で噛み締めたまま脳には伝わらない
味覚なんてものは温度感覚より先に失った
今僕が歩いている意味も
何処へ向かっているのかも
わからないのは人生も同じだった

たとえ今ここで雪に体を埋めたとしても
誰も何も言わないだろう
そもそも気が付かないだろう
だがしかし、
歩く意味が逃げるためでも
行く先が地獄だとしても
少し顔をあげれば銀色の粒が僕を見ていることを知っているから
いつか訪れるたった一瞬のために生きるのだ

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