結露の一粒がこんな形じゃなかったら、バタフライ効果を経て死なずに済んだ人がいたのだろうか。
結露の一粒くらいじゃありえそうにないと思った。
でも僕の残した足跡が誰かの人生を左右することなら容易に想像できた。
僕がさりげなく放った言葉、やり場なく動かした手足が誰かの運命を大きく変える所を。
もしそんなことがあったら、その人は幸せになれただろうか。
名も知らない誰かが、他の誰かの運命を左右する。
ゆらゆらと運命は揺蕩い続け、留まるべきところはなく、永遠に不確定のまま彷徨い続ける。
本当に蝶みたいだな、と思った。
見守っていた結露の粒はいつの間にか流れ去っていた。