『ハーヴティーの淹れ方』
街でユリはこう呼ばれている。
「困った時に助けてくれる優しいおねいさん」と。
ユリ自身はそのつもりはないのだが。
この子ももしかしたら評判を聞きつけてやってきたのかもしれない。
取り敢えずユリはハーヴティーを淹れる事にした。
魔法の師匠から教わった魔法の淹れ方。
ただしユリがやると19回に5回は失敗する。
そんなことも知らない少女はこくりとそれを飲んだ。
そして数秒目を閉じゆっくりと開けてこう言った。
「ねぇ、このハーヴティー変な味がする。まるでチープな味のオレンジジュースみたい。私が教えてあげようか?」
ユリは少し驚いてこう言った。
「教えてあげるって、君は記憶を失っているんじゃないのかい?」
少女は少し間をおいて言った。
「なぜだかこれだけは覚えているの。わからないけど。なんでだろ?」
ユリは合点がいったので少女に話してみた。
「それは記憶障害の症状だね。
端的に言うと君の記憶は心という水に沈んでしまったんだよ。
多分それをサルベージしてあげれば君の記憶が治ると思う、たぶんだけど。」
少女は少しぽかんとして口を開いた。
「治し方がわかったの?ならすぐに治してよ。早く思い出してお父さんお母さんの所に帰りたいわ!」
「まぁまぁ少し待ちたまえ。そう早まっちゃ駄目だよ。いくら私が魔法使いだったとしても準備って物が必要だよ。」
そうだ、とユリは閃いた。
「ねぇねぇ、記憶を戻す準備ができるまで家に泊まって行かない?トクベツに私の仕事を手伝わせてあげよう。」
少女は少々不服そうな顔をしたが、こくりと頷いた。
To be continued #31 『シュガァリィスノォ』
P.S.ずっと書きたかった。
チープな味のオレンジジュースって言う文章。
なんとなく良くある表現ですけどなんかアレですよね、アレ。
この言葉で言い表せないこの感じ、この感じが書きたかった。
この話は上のような思惑で書かれました。
もう何がなんだか分からなくなっている様です。僕自身が。