今日の夜も君と帰る。
他愛もない話。
君の好きな人の話。
いろんな話をしながら歩いていく。
でも。
そんな楽しい時間はもう終わり。
今日の夜も話せなかった、僕のこと。
「体は女だけど心は男。
男として生きていきたい。」
たった二行の単純な文を口にするのを、
今日も躊躇する。
しばらくの間沈黙が続いてから、
「帰ろ?」
毎日のように聞く君の声が、今日も聞こえる。
まだ君と一緒にいたい。
返事はしたくない。
すると君は、僕を抱きしめて、
そっと頬にキスをした。
数秒経ってから今起きたことを理解する。
唖然とする僕の顔を見て、
君は「どうしたの」と聞く。
やめてくれ。
そんなされたら、好きになりそうだよ。
その言葉を、グッと飲み込んで。
そのまま、僕と君はそれぞれの家路についた。
明日もまた、会えるよね。