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『愛憎劇の幕、その名はカーテン。』#1

 空いている窓から風が吹き抜ける。カーテンが揺れた。窓の外は快晴、奥に広がるは昼下がりの森林。どこからともなく狼の遠吠えのようなものが、風に運ばれてくるようでさえあった。
 扉を軽く叩く音がする。
「失礼いたします。お茶を持って参りました。少し、休憩なさってはいかがですか」
 メイドである。
「そうしよう」
 ほっと息をつき、応えたのは王。名を、ライオネルという。
 香るは果実、透き通った赤い色が、白い陶器に注がれた。
「今日はローズヒップか」
「はい」
 そう微笑むメイドの手は、心なしか震えて見えた。
 ライオネルは、眉を顰める。
「……具合が悪いのか?給仕などいい。休め」
再びカーテンが揺れた。椅子から立ち上がりかけたライオネルは、これ以上ないというほど、顔を顰めた。
「……お前は何をしている、リアム」
「何って、それはこっちのセリフだよ、おうさま」
 注ぎ終えたカップを持つメイドの手は、完全に震えていた。カップの中に生まれていく波紋が痛々しい。
 リアムと呼ばれた青年は、どこから現れたのかメイドの背後に立ち、メイドの喉元にナイフをあてがっている。
「キミ、何してるの?」
「お、お茶を……」
震えた声で応えるメイドに、リアムは口角を上げた。ぞっとするほど優しい微笑みだった。
「へぇ……苦しみながらそのお茶飲むのと、一瞬で喉かっ裂かれるの、どっちがいい?選ばせてあげるよ」

  • 『愛憎劇の幕、その名はカーテン。』
  • みなさまお久しぶりです、そしてはじめまして。
  • まだまだ続きます、全10話くらいかな。
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