音もなくライオネルの傍についたリアムは、泣くメイドを横目で見ながら尋ねる。
「おうさま、勝機はあるの?」
「ある」
即答したライオネルは続ける。
「お前がいるからな」
ぱちぱちと瞬きをするリアムは、得意げに笑う。
「ほんと、おうさまって俺のこと大好きだよね」
そう言い残し、身を翻して窓から飛び降りた。
「そこから飛び降りるなと何度も……」
既に届かないであろうリアムへ苦言を呈するような呟きに、部屋にいるもう一人の人物の声が重なる。
「……本当に、申し訳、ございませんでした……」
うなだれたメイドの、痛々しくも切なげな響きが届いた。ライオネルはメイドを見下ろしす。
「リアムは許さないだろうが、今回のことを大事にはしない。だが、二度目はないと思え」
そして、泣くメイドに視線を合わせた。
「家族は、大切だ」
泣きたくなるほど痛々しく、優しくも哀しげな微笑みだった。