『ガラシャのたぶんはじめてのお使い』
ある日ユリは突然こう言った。
「ガラシャ、君にひとつ魔法を教えてあげよう。」
ガラシャは少し迷ったがこう言った。
「どんな魔法?」
ユリは企む顔をしてこう言った。
「力持ちの魔法だよ。」
「......そんで、このグリモワールを読んで......そうそうそんな感じ......よし、出来た。
これで君は少しの間力持ちだよ。」
ユリは少しあざとい顔をしてこう続けた。
「それでさぁ...あの、ひとつ頼まれ事をしてくれないかしら?」
ガラシャはこの時心の中で、あぁあの時断っておけばよかったと後悔した。
「どんな頼まれ事?」
「あのね、お使いをしてきて欲しいんだ。」
「何を買ってくればいいの?」
「このメモに書いてあるやつ。」
「わかった、行ってくる。」
「ごめんね、行ってらっしゃい。」
―表
ガラシャは魔法都市ミコトの中心街へ向かって歩いていた。
「もう何よ、ユリったら。ひどいよ。」
こんなことをぶつぶつ言っていたら着いた。
ユリが買ってこいと言ったのは、一週間の食料と蛍と沢山の便箋と芍薬の花である。
食料は何処でも買えるがほかの物は特定の場所でしか買えない。
おかげでガラシャは街の隅から隅まで歩く羽目になった。
ガラシャは歩いている最中街を見て、この街はなんだか哀しい街だなと思った。
永遠とも思える摩天楼もガラシャの目にはなんだか物悲しく見えた。
アパルトマンに帰ると壁に積まれたグリモワールが崩れていて、ユリが片付けをしていた。
ユリはガラシャを見て、
「おっ、丁度いい所にガラシャが。
すまないが頼まれごとを.........。」
ガラシャは呆れてこう言った。
「もう、ユリは仕方が無いわね!」
Coming soon ―裏⬇
―裏
カリカリ...かりかり...かりかり...カリカリ...。
.........あの子はやはり魔法使いね。
グリモワールは暗号化された魔術の塊。
あの文字は魔法使いでは無ければ読めないはず。
それにあの『宝条』って苗字、
明らかにあの家だわ。
ああん、どうしよう。
私だけじゃ......。
かりかり...カリカリ...かりかり...カリカリ...。
ユリは、思考をやめた途端口を開いた。
「.........あの、出てきて良いですよ。師匠。」
瞬間、白い霧がユリの部屋に立ち込めた。
「あらぁ、良く気がついたわね。」
ハーヴの香りと共に現れたのは、
『知識』である。
ユリはいつも通りハーヴティーを淹れた。
今回は成功したようだ、知識は満足そうにティーを飲んでいる。
それから暫く取り留めも無い話を続けた。
暫くして知識は顔を変えこう言った。
「ねぇ、何時『マナ』を捨てたの?私の知っているアナタは『ユリ・ロトウ』なんて名前じゃ無かったわ。」
ユリは口を噤んだ。
「やはりね、『マナ』を捨てたのね。どおりでこんなオカシイ量の本を書いている訳だわ。
ダメじゃないの、アナタは私の一番弟子なのよ。
ダメじゃないの......私なんかと...一緒になっちゃ。」
ユリは何も返す事が出来なかった。
積み重ねた過去に、
人間はあまりにも非力である。
時間というものの巨大さは、
どんな大魔法使いでも覆す事は出来ない。
ユリは突如として凄まじい眠気に襲われた。
床に経たり込んだユリに知識はそっと囁いた。
「『鍵』は『ネペジ』にある。
せいぜい『あの子』を大事にすることね。」
.................................。
目覚めた時、知識はもう居なかった。
代わりに部屋に積んであったグリモワールが全て崩れていた。
ユリは涙を拭きこう呟いた。
「............片付けないと、ガラシャが帰ってくるわ。」
To be continued #33 『空の果ては地上』
P.S.まず訂正。今回は#32です。
今日は2本立てです。サービスです笑
テスト終わって開放されたはいいけど自転車旅したら疲れました。
ただのニートが東方の聖地に行っただけですが。