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空想

家のチャイムが鳴った
昨日いつも物静かな彼から「明日君の誕生日祝いに行くから」と言われてたのを思い出した
玄関のドアを開けると、見慣れた彼の姿があった
お互いあまり話すような性格ではないから、すぐに会話が途切れてしまう
心の奥には、言葉が沢山並んでいるのに
彼はおもむろに口を開いて
「公園行こっか」
と言葉を吐いた
外に出ると、春の香りが鼻をつく
目の前には太い大木が私達を見下ろすように立っている
生温い風に身を委ねながら、彼と横並びで歩く
公園のベンチに座って、お互いに沈黙が続く
空気を切るように彼が
「誕生日おめでとう」
と一言言ってくれた
普段あまり話さない彼だけど、実売私の事を心から愛してくれているんだと思えるようになった
二人、顔を寄せ合いながら手を重ねていつの間にか瞼が重たくなる

目を覚ますと、いつもの朝の景色が広がっていた
夢だったのか、と一瞬思ったが私の隣にはソファに座ってコーヒーを飲む彼がいた
「おはよう」
無愛想に笑う彼がなんだか可愛らしく思えた
あれから3年
私達は二人で生きていく事を決めて、今を過ごしている
窓を見上げると、あの日と同じような桜の花が咲いていた

  • 未来の物語のよう
  • 春の花
  • 二人
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