彼が生まれたのは
ある国の王子様が生まれた1日後でした
みんな王子様のお誕生に湧いて
彼が生まれたことになんて
見向きもしないでいました
彼が初めて歩いたのは
彼の遠い遠い親戚が亡くなった日でした
母親も父親も親戚の死を深く悲しんで
我が子の成長に気づかずに泣きました
彼が初めて話した言葉は
ママでもパパでもなく
「さよなら」でした
その言葉は
彼が一人で遊んでいるときに発せられました
彼が小さい頃に描いた絵は
道路に白いチョークで描いたものでした
やがてその絵は雨と車によって
きれいさっぱり消されました
小さな一人のお話。