彼は地域の子供達と一緒に
保育園へと通うことになりました
親がいないことに気づき泣きわめく子供
転んで号泣する子供
先生方は泣いている子供に声をかけてゆきました
子供はみるみるうちに笑顔になりました
まるで魔法を使ったかのように
彼は小さい頃から一人には慣れっこなので
教室の隅にぽつんと
何のおもちゃも絵本もない所で
1日を過ごしていました
先生はそんな彼に向かって
「この絵本、面白いよ、読まない?」
「お外で砂場遊びしよう!」
魔法の言葉をかけました
でも、もちろん彼に魔法はかからず
すました顔で
「ぼくは、このままで、いい」
そう応えるだけでした
まわりの子供達は円になって踊り
彼はその円の外で空を見上げる
少し変わった風景が、
その保育園ではいつの間にか普通になりました
小さな一人のお話。