非常階段に君がいる。 髪が靡いている。 君はどこかを見つめていて、見つめていない。 眼の焦点はどこにも結ばれていない。 君の周りに結界があるようで。 「男と女」という差の結界が。 そうじゃなくても君は誰も寄せ付けない。 僕は友達の相手をしながら君をみる。 君のことは何も分からない。 でも君に見惚れている。 君の手は僕よりちいさい。 でもしなやかで、その手は本をめくる手。 チャイムが響く。 君が堕ちてゆく。