これは一年ほど前の話です。
バレンタインの数日前が、当時好きな子の誕生日でした。
その子とはある程度仲が良かった、と自分では思っていたので、その子にちょっとしたプレゼントを渡しました。
ちなみに、その子は僕の好意に気づいていて、ついでに嫌われていたので、それは正直あまりよくないことだったかもしれません。
そして僕は、誕生日プレゼントと一緒に手紙を渡しました。嫌われていることを知っていたので、少しでもましにしたくて「僕を嫌いな理由は何?」と聞きました。
その返事が返ってきたのはちょうどバレンタインの日でした。
そこには案の定、いくつもの理由が書かれていました。そして「だから、私は君が嫌いです。そういう関係になることはないよ」と書いてありました。
家でそれを読んでいると、気づけば泣いていました。
着ていた服の袖を、その涙でぐしょぐしょにしながら。
そのとき、インターホンが鳴りました。
家には僕しかいなかったので、少しだけ腫れた目のまま出ました。
するとそこには、幼馴染が立っていました。
「これ、あげる」と言われて、手作りのチョコを渡してくれました。
少ない気力を振り絞って、小さく笑顔を作り「ありがとう」と言えました。
その子が帰った後、ひとりでチョコを食べると、また涙がこぼれました。
そしてそこに入っていた「来年は同じクラスになれるといいね」という言葉で、少しだけ気持ちが安らぎました。
しかし僕は気づきませんでした。
そのチョコが本命だったなんて。