この街で路上ライブを始めて4日目。
午後4時。僕は今日もネットカフェで、遅めの昼食を食べている。
コンビニのサンドイッチは、味は申し分ないくらいおいしいが、機械の味がどこかする。
まあ、こんな生活ももうすぐ終わるさ。
そんな言葉をずっと繰り返して、今までやってきた。
ペットボトルのお茶でパンとため息を飲み込んで、僕は部屋を出た。
「こんばんは。つむぐです。今日もライブ始めます。」
道ゆく人は、マイクとギターの聴き慣れない音で振り向く。そして、路上ライブを始めたのだと察すると、忙しそうに通り過ぎる。大抵の人はそんなもんだ。
でも、今日は一人だけ、周りとは違う反応をする人がいた。
視界の端から見える、不安げな黒い瞳。
さらさらの黒髪は、顎のあたりでボブをつくっている、
何人かの人が、それを見て不思議がっているが、彼女はまるで気にも留めない。
ただ、黒目はじっと、僕を見据えていた。