ーひゅん、ひゅぅん、と何かが風を切る音が聞こえる。
音のする方角では、昔風の軍服を着た少年が、鞭を振りまわしながら奇怪な生物に立ち向かっていた。
「…っ」
伸び縮みする鞭で、ライオンの胴体に観葉植物のような頭のついたバケモノに少年は攻撃を加えていたが、怪物の側頭部から伸びた蔓のようなものに弾き飛ばされてしまった。
だが、少年は地面に打ち付けられた衝撃をものともせずに起き上がると、手の中の鞭をオルゴールに変身させ、そのゼンマイを巻き始めた。
「={${*}”{>;‘,$\>\<;’;!」
無防備になった少年に向かって、バケモノは悠々と唸り声をあげながら近づいてくる。
しかし、あと数メートルのところで、バケモノは足元から崩れ落ちた。
「$;“\<\<⁈」
バケモノが己の身体をよく見ると、全身のあちこちにミミズ腫れやアザのような傷ができている。
何が起きたのか分からないバケモノは、必死になって立ち上がろうとするが、痛みに耐えきれないのかすぐに動けなくなった。
少年は音の鳴らないオルゴールを片手に、静かに化け物に近づいていった。
「”これ”が、さっき君が僕に与えた痛みなんだよ?」
少年は笑みを浮かべながら、オルゴールを鞭に変化させた。
そして無言で鞭を思い切りバケモノに振るった。