「先輩! こっちです!」
和服のような恰好をした少女に導かれ、蛍光色の妙な格好をした少年が家々の屋根の上を走っていく。
少年が着いた先では、他のコドモ達に介抱されている変わったセーラー服姿の少女が倒れていた。
「うちらが来る前から戦ってたみたいなんですけど、ついさっき”アイツ”の攻撃をモロに食らって、それで…」
周りのコドモ達の話を聞きながら、少年は倒れている少女に目をやった。
目に見えるケガは見当たらないが、少女は苦しそうに呼吸している。
「…さっきからサワラが治癒魔法何回も掛けてんですけど、あんまり効果がないみたいで…」
うん、うん、とうなずきながら、手の中のおもちゃみたいな銃を小瓶に変身させた。
「とりあえずおれの出番って事だな」
少年は小瓶の蓋を開けながら呟いた。
「…」
倒れている少女はちらりと少年の方を見た。
「あ、大丈夫だから、とりあえず応急処置をするだけ。安心して」
少年はそう少女に言いながら、小瓶の中の蛍光色の錠剤のようなものを少女の口に放り込んだ。
「これで平気。とりあえずこれで”死ぬこと”だけは回避できっから。あとおれの手でマジックアイテムを使ったから、ちゃんと効果は発動する、大丈夫」
訳の分からないまま錠剤を飲まされた少女は、とりあえず少年の言葉にうなずいていた。
「サワラ、もう1回治癒魔法掛けてくれ。多分今なら効くと思う」
あ、はい!と聖職者みたいな恰好をした少年は答え、倒れている少女の方へ駆け寄った。
「…そういえば、他のみんなは?」
さっきの錠剤の入った小瓶をまた銃に変えながら、少年は周りのコドモ達に尋ねる。
「フリード先輩とかはあっちでまだファントムと戦ってます!」
和服のような恰好をした少女は空を指差した。
その方向に目をやると、コドモが何人か、表面が木目のような模様になっているクビナガリュウのようなバケモノと戦っている。
「OK! ユウキ!」
はい! 先輩!と背の高い少女が杖を振るうと、少年は少しの助走をつけてから、そのまま住宅の屋根を蹴ってファントムの方へ跳んで行った。