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『祝福は似合わない』#2

 あーでもないこーでもない、なんでみんな僕の邪魔ばかりするんだ、なんていう言葉をまた生産しては手を動かす。器用な人である。先程憎まれ口は叩かれたものの、これは別に嫌われているそれではないのだとわかる。本当に切羽詰まっているのだろう。私には手伝ってあげることはできないから、コーヒーだけでも入れてあげようとソファから腰を上げた。
 ついでに私の分も入れようと、マグカップを二つ並べる。一方は月の模様があり、もう一方はマグロを模した魚がプリントされてある。以前使っていたマグカップを割ってしまった時、キミのはこっち、そう言って彼が出してくれたものであるが、やはり感性については疑問を感じずにいられない。そうは言っても、お気に入りにしてしまっている時点で私の負けである。コーヒーメーカーに、水と挽いたコーヒー豆をセットし、スイッチを入れる。するとタイミングが良いのか悪いのか、彼のただならぬ声音が聞こえてきた。だから私は、マグカップもそのままに、慌てて様子を見に行ったのだ。その後に思わずため息をついてしまったことがバレなくてよかったと、今だから思う。
僕の邪魔をしてそんなに楽しい?僕の血はおいしかった?そう彼が話しかけるのは紙。どうやら手を切ってしまったらしい。思っていた以上に疲れているのかもしれない。色んな意味で。
 小さく笑って、私は絆創膏を持ってきた。

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