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♯4 紡げ、笑え。

今日もライブは終わった。

さっきからこっちを覗いてくる女の子のことが、ライブ中ずっと気になっていた。
声を掛けてみようか。

そう思ったのも束の間、その人が僕のもとに近づいてきた。
とぼとぼとした足取りで、頼りない身長。
不安気な色が宿った黒い瞳がこっちを向く。

「あの、」
小さな声をかけた。
しかし、暫く経っても返事はない。
「あの!」
「あっ!!!!」
その人は驚いた。驚きたいのはこっちなのに。
すると、彼女は何やら大きなかばんから、ホワイトボードを取り出した。
そして、いそいそとペンで書き始めた。
暫く経って、ボードをこちらに向けた。
大きな丸い字で書いてある。

私、耳が聴こえないんです。

驚いた。
「あっ、えっ、そうだったんだ、、、あそうか。聴こえないんだよねごめん、えっとー、、」
僕はあたふたして、かける言葉に迷った。

すると、彼女はクスリと笑って、何か下に書き足した。

驚かせちゃいました?ごめんね。

笑いながら見せてくれた。

あっ、
この人と話がしたい。
(ちょっと、貸して)
身振りで示す。

そして、またその下に僕は書いた。

今度は最前列で観に来てください。

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