とある海岸にて、海上に現れたファントムを迎え撃つために多くの魔法使いたちが準備に追われていた。
ファントムの軍はゆっくりと移動しており、もう間もなくこの岸に到着する。迫る開戦を前に、この場の指揮を任された魔法使い――イツキは最後の作戦確認を終えようとしていた。
「――……ファントムどもが岸に到着する前に遠距離攻撃で数を減らす。到着したら盾役と近接攻撃で遅延させ、回復と休憩をローテしながら戦う。広域魔法を持っている者はそれぞれの部隊の指示に従って発動する。この作戦でいいな」
ブリーフィングに集まっているすべての魔法使いを見渡す。ここにいるのは少なくない間魔法使いとして生きてきた者たちだ。
魔法使いにとって少なくない間を生き抜くというのはとても難しい。魔法の使い方を心得る前に、または魔法自体が弱すぎてファントムに殺されてしまうものが多いからだ。それゆえ大人の魔法使いは少なく、事実この場にいるのも大半が高校生以下の者たちだ。
イツキは魔法使いになって11年目。今年で21歳となる彼はこの中では間違いなく年長である。
今まで生きてこられたのは頼れる仲間と魔法があったからだが、だからこそ絶対に仲間を守ってみせる。
「じゃあ最後に。これから迎え撃つのは海の上からやってくる3万のファントムだ。数十年に一度の災害ってやつだ。初めての俺らにとっては未知の体験、怖くない奴なんかいない。……正直俺だって怖い。だがお前の手の中を見てみろ。そこにはお前の使いたかった魔法の力がある。お前の隣を見てみろ。ここまで生き残った頼れる仲間がいる。
大丈夫。自分の魔法と仲間を信じろ!」