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ピエロ

 あなたは夜の街を歩いている。夜の街はにぎやかで、ピエロがふうせんを配っている。日曜の夜にピエロがふうせんを配っているなんて変だなあ、とあなたは思うが、好物のたい焼きの店ののぼりを見て納得する。今日は受験生の日なのだ。もちろんあなたは受験生である。あなたはたい焼きを食べながら幸せな気分で夜の街を散策する。なんたってあなたは受験生だからだ。
 あなたはそろそろ家に帰ろうと、もと来た道をたどるが、まったく知らない場所に来てしまう。地図を見ようとスマホを取り出すが、あいにく充電が切れている。
 泣きそうになりながらやみくもに歩いていると、ふうせんを配っていたピエロが立っている。ピエロに道をたずねると、ピエロはなにも言わず歩き出す。ピエロにしたがい歩いていると、いつの間にか夜が明けている。
 あなたはキッチンで朝食を作るお母さんの背中を見て、ピエロのことはもう忘れようと思う。そりゃそうでしょう。あなたは受験生なんだから。

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