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水の中。冬。

ざぶんざぶんと黒い水が生き物のように動く
がっぷがっぷとのみこんだ今までのかなしみが
夕べのうちに融けてなくなってるなんて、誰が言ったんだ。
指先が、しびれるように
喉のあたりが震えるように
私は生き物でした、生きていました、確かに
今もってわからないのは、恋だとか、夢だとか、そういったこと。
今朝コーヒーを飲みながら読んだ新聞では、いたいけな少女の惨殺事件が一面を飾っていた。
彼女の耳にはイヤリングなどがついていただろうか
そして、その子の母親は、くたびれたエプロンなどして
目玉焼きやベーコンを朝食に並べながら、溜め息などをつくのだ。
どぶんと音をたてて
大きな魚が鱗をきらめかせ私の横を泳いでいく
がっぷがっぷとのみこんだかなしみは
腹の底に冷たく、キリキリと痛むように
胸の内に杭を打つ
水の中。夜とも朝とも判らず
そう、生きていました、私はたった今
雪のような呼気を吐き出した。

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