初めは1つのピアノだった
白い鍵盤と黒鍵で
自分を奏でることができた
あの時は世界が音を紡いでいた
言葉が空から降ってきた
だからあなたに嫉妬した
世界をかき鳴らす
あなたになりたかった
僕の光でそして闇だった
そしてピアノの黒は
夜に同化するように
溶けていった
部活終わりのオレンジの空
もう音にはならない
イヤホンを耳につけて
スピーカーから流れるRADWIMPSが
心臓の鼓動を乱す
クラシックは締め付けるから
体を委ねて
それでも
ベートーベンの「月光」が弾けない
もうあの時には戻れない
あの時の自信は空へ
あなたが妬ましい
努力は才能に勝てないから
全ての才能を憎んだ
それを捻じ曲げることができるなら
いつまででもかき鳴らそう
ずっとアコギを見ていた
Fコードも届かない
ショーウィンドウに映るのは
夜の闇か
音の光か
僕にも分からなかった