“ジリッジリッ”とふくらんだ
ひと夏の恋の始まり
逃げ水 ふたりで
追いかけ走った…
夜風ももう涼しくなって
ひと足先 あなたは消えた
玄関先 しゃがみこむ私
余った花火に火をつける
“パチッパチッ”と燃えさかる
ひと夏の恋の盛り日
激しく、激しく、
音を立てたの
哀しいほどきれいな月が
水張った バケツに映る
意地張った あのときの私
今なら素直になれるのに
“チリッチリッ”と消えてゆく
ひと夏の恋の残り火
虚しく、虚しく、
叫んでただけ
いまアスファルトに落ちた
ひと夏の恋の終りが
静かな、静かな、
9月の花火