貴方の大好きな、黄金色のスープを作ります。薄らいできてしまった貴方の笑顔を、必死で思い出しながら。ずっと、待っていました。迎えに行っても良かったのだけれど、私を連れて行かなかったのは、貴方の優しさだと思うことにしたので、ずっと待っていました。
真冬の山の中はとても静かで、雪の落ちる音だけがやけに響きます。部屋の中は、木の燃える心地よい音で満ちています。
ああ、早く貴方に会いたい。
私はゆっくりと玉ねぎを刻みます。貴方が帰ってくるまでに、スープが出来てしまうと寂しいから。
雪を踏みしめる貴方の足音を聞き逃さないよう、裏口をそっと開けました。
ああ、早く貴方に会いたい。
もし貴方が帰って来なければ。その時は、貴方からの帰りの便りを燃やしてしまうつもりです。そうして、私はいつまでも、愛する人を待ち続ける健気な少女を演じるのです。
ああ、貴方が。貴方の薄汚れたコートが、木々の隙間から見えています。
今だけは、迎えにいこう。
私は、靴下のまま雪の上を駆けました。