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黒金の英雄

果てしなく続く、長い線路。
その線路の上に、黒衣の男が一人。
その男はかつて、黒金の巨体を持ち、
大戦の動乱の中、蒸気を吐き、喘ぎながら、
懸命に各地を駆け回った。
そしてその姿は、戦争で疲弊仕切った人々を勇気付け、再び立ち上がる気力を与えた。
力強く駆け回る彼を、
人々は『英雄』と呼び、彼を称えた

…だが、もう彼には自分で走るほどの力も、残っていなかった。
やがて彼は動けなくなり、用済みとなり、
人々に忘れ去られていった…

残された僅かな時間。
彼は黒金の身体を捨て、今の姿になる事を選んだ。
今や彼の勇姿を知る者は、
もう数える程しかいないだろう。
だがそれでもいい。
それで構わない。
この短い時間を静かに過ごせるのならば、
自分はなんだって構わない。

…だが、一つ。一つだけ願いが叶うのならば…

…もう一度、この大地を、自分の足で駆け回りたかった…

そう呟くや否や、
黒金の英雄は、優しい光に包まれて、
英雄と呼ばれたあの頃のように、
旅立っていった……。

  • 鉄道関係
  • 擬人化
  • 多分蒸気機関車だよね?
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