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霧の魔法譚 #12 1/2

そういえばイツキはこれ見るの初めてだったなー。

先ほどに続き二つ目の魔法陣を描いている大賢者の頭は、真剣な表情とは裏腹に雑念で満ち溢れていた。魔法陣の生成は非常に難しく、普通の魔法使いならひたすら集中力を注ぎ込んで作らなければならないが、人間など軽く凌駕している大賢者にとっては造作もない。昔から遊び慣れてきた玩具を弄ぶように杖を振り、魔法の線を次々と描いていく。今回のような規模が大きい魔法陣は無駄に生成時間ばかり長く、こうして全く関係ないことを考えながら組み立てることも大賢者にとっては日常茶飯事であった。

イツキが見るのが初めてな”これ”とは魔法陣のことではない。大攻勢のことだ。
前回の大攻勢が起きたのがおよそ20年ほど前。イツキは当然幼く、魔法使いという存在も知らなかった頃。大攻勢の様子など映像に残せるようなものでもないから、今の世代は口伝えにしか大攻勢の様子を知らない。
初めて見た”大攻勢の敵”は、どうやらイツキの想像の遥か及ばない存在だったようだ。かなりのショックを受けたようで、ちらりと横を見れば、運転席で呆然としているのが見える。

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