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佐々木の世界

AM6:00
【ピピッピピッピピッピピッ】
「ん、、、くわぁ」
また今日も朝がやって来た。

【ピロリン】
『おはよー!今日の学校休むー!』
『オッケー('-^*)ok』

正直、友達付き合いは苦手だ。
人と話すのがそもそも得意ではない。
だからと言って、友達付き合いをしないのは勇者である。孤立主義ではないから、そこは乗り切るしかないのだが。とりあえず返信せねば。
何とか打ち込んで、いざ送信しようと思った時には、既にトーク画面の話題は移っていた。

AM8:00
「詩織ちゃん、おはよー」
「お、おはよ、、、」
人と話すのは慣れない。難しい。
私は小さい頃から、「大人しい性格」というレッテルを貼られて来た。だからなのか、話しかけてくれる人も少なく、いつの間にか「頭が良い」と有りもしないことを言われるようになった。

今日も、一人で過ごすだろう。特に異論はない。いつも通りの生活。何も変わらなくて良い。

誰かに侵入してもらおうだとか、この生活を壊そうだとか、そんなことは望まない。

席に着いて、お気に入りの本を広げて、栞を取り、 さぁ本を読もうとしたその時。
「佐々木さんいますか?佐々木詩織さんです」
誰かに名前を呼ばれた。誰だ。

廊下に目を向けると、そこには知らない女子が立っていた。
「はい、佐々木ですけど、、、」
緊張状態かも。あぁ、机の上の本は大丈夫だろうか。置いて来てしまった。どうでも良いことに気がとられる。

「あの、私、2年夏組の田辺と言います」
田辺さんは軽く自己紹介をした。
「夏組のクラス委員をしています。お時間頂戴してもよろしいでしょうか」

良いから早く言えよ。こっちは(本を読むのが)忙しいんだよ。おせーよ。
なんて思っていても口には出せない。こんな時の為に、世間には愛想笑いというものが存在する。

「時間はありますが、何のご用件ですか」
「冬組だけ、クラス委員が決まっていないんです。もし良ければ、佐々木さんに」
「お断りします!」

これで良い。私に役職など必要ない。田辺さんには悪いが、私には向いていないのだ。

今はこのままで良い。
そう思っていた私に、色々な出来事が降りかかるのだが、それはまた次のお話で。

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