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雨が降っていることに気付かなかった女の子の話。

空が綺麗だった。
本当にそれだけなのだけど…。
灰色と桃色の混じり合った薄い雲は、人混みのビニール傘越しに見ると本当に美しくて…。
気がつけば、駅とは反対方向に走り出していた。
いつもなら立ち止まって直す、スカートの裾の乱れも気にせず、水を含んで重くなったスニーカーを励ましてひたすら走った。
あの雲を、もっと近くで見たかった。
走って、走って、走って。
見たこともない住宅街に来ていた。
誰もいないアスファルトの水溜りには、やっぱり薄い雲が…映っていなかった。
そこにあるのは、ただただ黒いだけの闇で。ふと顔を上げると、もう桃色の雲なんか跡形もなく消えていて、星ひとつない、清々しいほどに真っ暗な空が広がっていた。
スマホの充電は切れていた。
私は呆然と、なぜかはっきりと覚えている歩いてきた道を辿った。
次の日、風邪をひいたのは言うまでもない。

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