別に、頼み事1つ断っただけ。それだけ、だけど。暴言吐きつつ突き飛ばしたり物投げつけたりする母親も。それに便乗して愚か者だと嘆く父親も。火の粉が散らないように黙っている妹も。母親を真似て叩いたり蹴ったりする弟も。いいよ、もう。外傷なんてついてくれないし、それでも救われる時はあるし、次の日の学校では何ともなかったように振る舞えるから、死ぬほどタチが悪い。感謝、してる、よ。してる、はずなのにね。体が逆らうことを覚えているのは、きっと捻くれた私が私であるための唯一の証明だ。大丈夫、明日もおはよって笑える。鏡の前で練習した。止まりそうな心臓を、忘れそうな呼吸を、昨日をなぞって動かした。誰に振り向いてもらえなくても、「私」はここにいるから。