あらゆる悲しみから
苦しみから
守ってくれていた傘の存在に気付いたのは、皮肉にも、その傘が壊れた瞬間だった。
哀しみの雨がアスファルトを強く叩いた。嘆きの風が頬を冷たく切っていった。
煙色の空は一見真っ白で
純粋で無垢な天使が、案外残酷であることを思い知らされた。
夜、眠りにつく直前、気づかぬうちに哀しみは去った。でも、それを確認する間も無く私は沈んだ。
冬の朝は晴れている方が寒い。
全身を切るように張り詰めた空気が痛い。
明るい太陽みたいなあの子が
1番危ないナイフを持っていることを思い出した。
きっと今日も傘はない。
きっと明日も傘はない。