「大賢者っ! ひっ飛行機っ、墜ちてきて……ぇぇえええあああああっぶねええ!!」
自分たちのもとへ一直線に墜落する火の玉を避けようと、イツキはハンドルをいっぱいに回して軌道から逸れる。すぐ真横を通過していくのを生きた心地がないまま見送ると、続く二つ目が接近中であることに気が付いた。
「落ち着けイツキ。そいつは我々には当たらな――」
「ああああああああぶつかるーーーーー!!!!!」
「人の話は聞こうか」
ゴンッ、とイツキの頭が鈍い音を立てる。イツキの口からはヴェッという音が漏れた。
首の後ろでも叩いて気絶させようかとも思ったが、頭頂部への鉄拳制裁だけで黙ってくれた。悶絶しているようにも見える。
「あれはシオンの魔法だ。シオンが操っているから私たちに当たることはない」
「……。……何でも暴力で解決しようとするのやめない? あなた大賢者でしょ?」
「逆にイツキが下手にハンドルを動かしたりするとシオンの予想を外れて当たりかねない。できれば停車させてくれないか」
「聞いてねえんだよなぁ……」