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霧の魔法譚 #15 4/6

にしても。
(戦争だよな、これ。どうみても)
この国のかつての国旗が描かれた戦闘機と、海に浮かぶ重厚感漂う真っ黒い戦艦。当時の新聞か本でも読んだのだろうか、それにしてもすごい完成度だと感心する。さっきまでの静謐な空気は雲散霧消し、まるで戦争モノのCG映画の中にいるかのような錯覚を覚えた。
また一つ、儚く散った戦闘機の残骸が海へ落下していく。
流れ落ちた屑鉄は命無き亡霊兵を巻き込み、海の底へと引きずり込んでいく。雨垂れのように、落ちては砕けファントムを破壊する。今や奇麗に整列していたファントム兵たちはもう見る影もなく、明らかに壊滅状態だった。
(……あれだけいたファントムがたった一人の魔法使いの手で壊滅、か。ほんと、何でもできすぎて嫉妬してしまいそうだ)
霧の魔法使いは何かを誇る顔一つすることなく、おそらく今も閉じた瞳の奥で飛行機を落とし続けているのだろう。
その気になれば自分たちのもとに銃弾や砲弾の一つでも届かせることができる……いや、もっと単純に、自分の死を想像されれば私は死ぬのだ。何でもできるとはつまりそういうことだ。

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