130円のシュークリームがぼとりと落ちる
吐き捨てられた真っ黒なガムはもうずっと昔からこの街を見ていた
吸い殻と絆創膏、ひどく甘いカスタード
ビルに翻したスカートの裾、女の子と目が合った
坂の上の異界を抜けて
ネオンの灯り切らないうちに
歩道橋の一夜の残骸
交差点の向こう側、必死でだれかを探していた
幾多の人の波の中
だれとも分からないだれかのことを
紙人形に揉まれて彷徨う亡霊
花束を抱えて歩く少女
すれ違いざまに右目を覗き込んだ
生きることと同義のように
嘘と嘘を囁き合っている
貴方の嘘を嘘と知りながら
私の吐息さえも嘘だった
硬貨と指先が触れる
もう貴方の顔も声も忘れてしまった
名前も知らない暇潰し
纏わりついた匂い、静かに息を止める
好奇心と吐き気、下手な常套句
笑ってしまうくらいチープなおままごと
手も振らないで背を向けて
おもちゃのような虚構も食べ飽きた
暇潰しにもならないアスファルト