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夢の中でだけ行ける公衆電話

夢の中でだけ行ける公衆電話。
くるぶしまで浸る水の中を進んで、
右手には10円玉を3つ。
ガチャリという重さ、
おもちゃみたいな黄緑色を耳にあてる。

お願い。出て、まだ、起きていて。

「ーーし、もしもし」
「門待くん? ぼくです、ぼく」
「ああ、ほんとうに……」
「そうだよ、できたんだ」
カチャン
「でも……だめだ……すぐに見つかっちゃう」
「そしたら次の方法を考えよう」
「いや、きみも危ない」
カチャン
「ぼくのことはいいよ、ねえ、門待くんは
 門待くんはどうしたいの」
「……」
「ねえって、、」
「……」
ツーーーーー  時間切れだ。

ため息と重なるように、ウ、と水面に自分の陰がのびる。いけない。甲高いベルの音。
くるくる回るサーチライトを背に、ぱしゃぱしゃと先に進む。
次の方法を考えようーーさっき自分が門松くんに言った言葉を思い出す。
また今度。大丈夫、大丈夫。

目覚まし時計の音が聞こえる。

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