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禁忌

禁忌、というものがあるらしい。
触れることも見ることも許されない、見ることができないからそれであるかも分からないけど。
君もよく知っているだろう。侵してはならない領域。ほら、白雪姫はりんごを食べてはいけない。ラプンツェルは塔から降りてはならない。
法律とかではないよ。あれは人と人とのお約束事。
禁忌とはそうではない。多分、私やあなたの本質を揺るがすのだろう。
人間の本質を損なうのだろう。そうなのかもしれない。
そういうものだ。禁忌とは。
侵してはならない。
侵してはならないよ、その先に何が見えようとも。奇麗な空や、ほら、花園が広がっていようとも。見てはいけない。目を背けよう。
目を背けなければならないよ。変な気を起こさないように。教育だよ。私とあなたのため。
言った通り、私やあなたの大事な柱が揺らいでしまうから。
とにかく。いけないことをしてはいけないよ。当たり前のこと。
見てはいけない。踏み入ってはいけない。指の隙間から覗くのもいけない。惰弱な精神が邪魔をするだろう、そういうものだ。人間とは。
人間とは、そういうものだ。脆弱な。
人間は脆弱だが、だからこそ禁忌を忘れてはいけない。
忘れるな。
真っ当な人間は、決して禁忌を忘れない。
私もあなたも、真っ当でいるのが正しい。
正しいことを、人はするべきだ。
正しくないことをしてはいけない。
禁忌を侵してはならない。
これは鎖ではない。私とあなたを守る命綱だ。
あなたを守るためだ。
禁忌に対して触れたいとか見たいとか、絶対に考えてはいけない。
絶対だ。

分かったら、さあ。
正しいことをしようじゃないか。

  • 長っが(
  • 正しいことをするために、正しいことをしよう(笑)
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  • 破ったらどうなるだとかそういうことじゃなく、もっと根本的な、純粋に『破ってはいけない』っていう。そういうの良いですよね。長い作品は読み応えがあるので、見ると嬉しくなります。

  • ナニガシさんレスありがとうございます!
    合理性を追求する現代の思考では「理由のない掟」なんて叩かれて当然だと思いますが、実は人間の理性では理由を説明できないだけ……なんてこともあるかもしれませんね。都合の悪くなった大人たちの逃げ場所のように書かれることも多いです。

    見てしまったその先の花を好きになってしまうことだってあるのです。永遠の信奉者たる禁忌の番人がやがて枯れゆく花を見て「ほらやっぱり」と説こうとも。なんとファンタジー。