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対怪談逃避行

時刻はおよそ午前2時。点滅する街灯が不気味に照らす仄暗い交差点を、安全確認もせず全力疾走で突っ切る。どうせ車など通らないのだから問題無い。
しばらく走ると、ある団地の一棟が目に入る。ちょうど良い。その階段を駆け上り、一階と二階の中間に座り込む。呼吸を整えながら外の様子を確認する。どうやら今のところ、追ってくる気配は無いようだ。
「……上手く撒けたかな。もうこれ以上追いかけてこなきゃ良いけど。しかし、こんな時間に来るとか、常識外れも良いところだよな」
「はい、そうですね……ッ!?」
叫び声を上げそうになるが、声の主が咄嗟に口を塞いでくれたので、どうにか堪えられた。
声の主は、私より少し歳上の、痩せた頼りない男だった。髪も髭もろくに手入れしておらず、季節と合わない、薄い古ぼけたロングコートを羽織った男。あまり一緒に居たくないタイプの奴だ。
一体誰なんだ、と目で問うと、男は懐からスマートフォンを取り出し、何やら打ち込んでから見せてきた。
『ただのオカルトマニアだ。よろしく』
口から手を離してくれたので、とりあえず会釈する。
『君が何に追われているのか当ててやろうか』
「わ……分かるんですか?」
小声で言い直す。
『分かる。いや、分からない。正体を問われると、憶測と出鱈目ばかりになりそうだ。けど、どの物語かは分かる』
どういうことだろう。

  • 長編小説
  • 企画しといて何もしないのは嘘でしょってことで
  • 都市伝説(?)アレンジ
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