恐竜くんには眠れない夜に会える。まぶたの裏に現れるものだから、一応目は瞑ってないといけない。いつかの眠れない夜、ずいぶん打ち解けた恐竜くんがカラカラと言ってきた。
「ぼくの父さんに会わせてあげる」
のそのそと歩む恐竜くんに合わせてゆっくり歩く。私はこの速度で歳を重ねていくのだなあ。着いたよ、と丘の上、広がるのは海。
海…が父さん?
「は、はじめまして!
恐竜くんにはいつもお世話になってます」
カラカラと笑う恐竜くんに見守られながら、何かを思い出せそうな気がした。大事だったこと。
「きみも父さんって呼んでいいよ」
「ほ、ほんと。ありがとう」
帰り始める恐竜くんに慌ててあとを追う。恐竜くんは大きなカラダをしているけれど、だんだんわかってきた。優しいこと。こわがりなこと。
背後には海。父さん、私たちの。