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対怪談逃避行5

「……はあ、はあ、………よし、この辺で良いだろう」
団地を抜け、出鱈目に走り続け、男が突然立ち止まる。この街は坂が多いから、彼も私も息切れがひどい。
「はぁ、はぁ……、何です、突然止まって……」
「呼吸を整えたら、双眼鏡でさっき居た場所を見てみて」
何度か深呼吸をして、双眼鏡を覗く。彼は、上手い具合に団地より高い場所に逃げていたようだ。おかげでさっき居た場所の様子がよく分かる。『奴』がそこでキョロキョロしている。しかし、すぐにこちらを向き、笑顔になって走り出した。
「き、来ました!」
「よし、もう走れるね?オカルトは体力勝負だからね。まだまだ逃げるよー」
彼について逃げる。今度は少しずつ下へ下へと進んでいるようだ。住宅地に入り、家々の間の細い道を、どんどん進んでいく。
「あの、行き止まりに入ったりしたらまずいんじゃ……」
「大丈夫、この辺の地図や地形は覚えてる」
前を向いたまま、彼が答える。
「はあ……、そういえば、お名前は?呼ぶ時困りそうなので教えてください」
「ふむ……」
少し考えるようにしてから、彼は答えた。
「蓮華戸。そう呼んで」
「今の間は?」
「名前を考えていた」
偽名かこの野郎。

  • 長編小説
  • 今月中に終わらないことが確定してしまった
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