0

雨降る夕方にて #2

しばらく待っていると男子生徒三人組がやってきた。そして、そのうちの一人は松葉杖をついていた。そして、その松葉杖の男子がほかの男子に支えられ向かった先は、先ほどの女性の車だった。どうやら女性は松葉杖の男子の保護者で、車で迎えに来ていたようだった。松葉杖の男子が車に乗り込むと、女性が再びこちらに歩いてきた。そして女性はこう言い放った。
「それ、安い傘だし、ちょっと曲がっちゃってるから、あなたにあげる。」
またまた、予想外な女性の発言に驚き、僕は慌てて断ったが、また押し切られてしまった。そして女性は車に戻り、駐車場を去った。僕の握り締めている傘を見ながら思った。優しい人だな、と。見ず知らずの子供に傘をあげられるなんてすごいな、と。雨の音が響く中、ぼんやりと思った。こんなことが現実に起きるんだな、と。女性が駐車場を去った直後に、見慣れた車が駐車場にやってきた。車に乗り込むと親にこう尋ねられた。
「そんなにかわいい傘持ってたっけ?」
僕は親に事情を説明した。とても助かったし、迷惑をかけてしまったのでお礼がしたいと思ったが、その人の名前は分からないし、毎日送迎に来ているようではなかったので、もう会うことはできないかもしれない。そんな風に思ったことを親に伝えると、
「大人になってから今日の自分みたいな子を見かけたら同じことをしてあげればいいんだよ」と返された。その言葉に納得した僕は、この助けられた経験を、また誰かに返せたらいいな、と思った。
そんな、雨降る夕方のことだった。

  • 長編小説
  • これ実話、昨日の話
  • 二話で終わってすまんかった
レスを書き込む

この書き込みにレスをつけるにはログインが必要です。