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対怪談逃避行10

「とにかく、これでこのお話はお終いだ。我々人間は、見事怪異を撃退し、街には平和が戻った。何から何まで万々歳。お疲れ様」
「あ、はい……」
しかし、徹夜で走り通しだったからか、安心すると流石に疲労が一気にやって来た。眠気と疲労とで、膝の力が抜け、その場に座り込んでしまう。
「ありゃ。まあ、徹夜だったからねえ。軽い休憩以外はずっと走ってたし、緊張が抜ければ、そりゃあそうもなるか。ちょっと待ってな、タクシー呼ぶから。君の家がどこかは分からないから、行き先は自分で運転士に言っておくれよ」
「はい、すいません……」
そこから先の記憶は曖昧だ。気がついたら、自分の家のベッドに突っ伏してた。
「………何だったんだろ、変な夢……?」
水でも飲んで落ち着こうととベッドから立ち上がろうとしたけど、足に上手く力が入らなくて転んでしまった。筋肉痛も酷い。それでやっと、夕べの『あれ』が現実だったと認識できた。
「……マジか。じゃあ、『奴』も……?」
全身の毛が逆立つような感覚。あの時は深夜テンション的なものもあって恐怖が麻痺してたようなところもあったけど、今思い出すと、めちゃくちゃ怖い出来事だったじゃないか。
「………」
とりあえず、枕元に転がっていた双眼鏡を拾い上げる。首にかけるための紐のところを見ると、細く巻いた紙が結んであった。それを解いて広げてみると、『蓮華戸 080-○○○-☓☓☓☓ オカルトに出会ったら相談サレタシ』という走り書きが。
「………まあ、使うことなんて無いだろうけど」
四つ折りにして鞄に放り込み、双眼鏡の方は少し考えてから、押入れに投げ込んでおいた。
「……もう、夜に双眼鏡使うのはやめよ」

  • 長編小説
  • これにて完結
  • 都市伝説(?)アレンジ
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