「あっ!先生〜!!」
廊下で先生を見つけたので駆け出す。
『何だ?』
「ん〜、特に用事がある訳ではないかなぁ〜。」
『次は昼休みだろう? ぶらぶらするか?』
「その前にご飯、一緒に食べよっ!!」
そう言ったとき、向こうから他の教師が来るのが見えた。
「あっ……。ちょっと失礼しま〜す。」
先生が着ている丈の長いローブの中に潜り込む。
『おい……。』「先生、しっー!!!」
『まったく。しょうがないな。』
先生が壁に向かって少しずつ後ずさり、持っていた教科書を窓辺に置く。
向こうから来た教師が近づいてくる。
先生の前で止まると“どうかしましたか?”と声をかけた。
『いや、教室に忘れ物をしたような気がしたのだがポケットに入っていた。』
そう言うと、ポッケの中から教師全員が使っているチョークの入った箱を出した。
“気をつけてくださいね”
『あぁ。』
そんな会話が聞こえた後、遠のいていく足音が聞こえた。
『もういいぞ。出ておいで。』
「ぷはぁ! 先生、魔法使った?」
『彼奴は視野が狭い。魔法なんぞ使わなくても君を隠せるさ。』
「ふふ。ありがとう。しかも先生、チョークなんて使わないのにねっ(笑)。」
『……君は私には話しかけるのに、何故他の教師には懐かないんだ?』
「犬とか猫みたいに言わないで!なんでって嫌いだからよ。単純でしょ?(笑)」
イタズラに笑う。
『まったく君は。』
「“まったく”ってさっきも聞いた!ほら、ご飯いこう!!」
『まったくもって可愛い生徒だ……。』
そう呟いているのが聴こえた。
こういう事を言うから私は先生が好きだ。
けど、恥ずかしかったから聴こえないフリをした。
「ほら!早く来て!!!私の事ちゃんと見てくれるの先生しかいないんだから!!」
『わかった、わかった。さぁ行こう。』
私は昔、教師の言葉で傷ついていた。もちろん今もだが、全人種“教師”は全く同じ事を言う。
だが、昔いろいろあった先生はイジワルはするものの、命の恩人だった。
そんな先生をキライにはなれなかった。
私達は予定通りご飯を食べ、広い校舎をぶらぶらした。
春の風が心地良かった。