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ずどどど、かしゅり、ととんたん #2


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 キョロキョロと不自然に辺りを見回す少女のことが妙に気になって、そっと後を追いかけた。
 水色のランドセルを背負っているので、学校帰りだろうか。
 こぢんまりとした店内を、少女の歩調に合わせ早足で歩く。お菓子売り場に差しかかったところで彼女のペースが落ちた。ここが、目的地らしい。
 少女は、おどおどしていた。そして、キョロキョロしていた。
 しばらくその場に立ちすくんでいたが、よし、と言う声が聞こえてきそうなくらい勢いよく首を上下に動かして、右手を伸ばした。手に取ったのはキャラクターが描かれたプラスチック製のカードが入ったウエハースだった。園児から小学校低学年くらいの女の子に絶大な人気を誇る美少女戦隊アニメのキャラクターだ。私も幼い頃は随分と熱中していた記憶がある。
 少女は、見た感じ小学校四、五年くらいに見える。このカード入りウエハースを買うのが恥ずかしいと感じているのかもしれない。だから挙動不審だったのか、と納得しかけたそのときだった_____
___少女は、右手に握られたそれをスカートのポケットにするりと仕舞おうとした。
 目を疑った。目の前で見知らぬ少女が盗みを働いた。そうしてすぐに後悔の念に苛まれた。どうして後を追いかけたりしたのだろう。見たくなかった、知りたくなかった。
『そんなことしちゃ駄目だよ』喉元まで出かかった言葉。ほらね、やっぱり言えない。俯いて立ちすくむことしかできなかった。

  • 連投しまくりますすみません。
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