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ずどどど、かしゅり、ととんたん #3

 ぱしっ。

 場違いに軽快な音がしたがしたので顔を上げた。
 さっきまで私と少女しかいなかったはずのお菓子売り場に、女性がいた。先ほどの音は、その女性が少女からウエハースを取り上げた音だったようだ。そして手持ち無沙汰となった少女の右手をぎゅっと握りしめて、レジがある方向へ歩き出した。
 良かった、親御さんいらっしゃったのか、と安堵しかけたが、少女の顔は青ざめ、小刻みに肩が震えていた。この様子からすると、知り合いにはとても見えない。
 万引き少女の末路が気にならないわけがなく、私は当然のように後をついていった。
 女性は少女の手を握ったままレジに並んだ。少女と繋いである左手は解かずに、片手だけで鞄から器用にクレジットカードを取り出した。頑なに手を解かないのが、逃さないぞ、という強い意志の表れのように感じた。
「クレジット一括で」
 少し離れた場所にいる私にもはっきり聞こえるくらいの声量で女性が言った。よく通る声で、何だか聞いていて心地よかった。
 レジを終えて、袋詰めの台の前で女性は優しく微笑みながら、購入したウエハースを少女に手渡した。予想外の対応に私は驚いたが、少女はもっと驚いたことだろう。もともとまんまるな目をさらに丸くしている。
「ほら、早く帰りなさい。お家の人が心配するわよ」
 女性の言葉にはっとして、少女はほとんど転げそうな勢いで店を後にした。
 これで一件落着、と思ったのも束の間。少女を見送った女性が突然くるりと振り返り、明らかに私を見てニヤリと笑みを浮かべた。

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