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この店では、平日の夕方六時半にタイムセールが行われる。今日はなんと、十個入の卵がお一人様二パックまで九十九円で買える。
六時頃になると、ぞろぞろと主婦がタイムセール商品を手に入れるために集まってくる。私はいつも学校帰りに店に寄り、その中に加わる。
「えー、何だかあたしが変わり者みたいに語るじゃない。本当にそんなふうに出会ったっけ」
タイムセールが始まるまで、京本さんと他愛もない会話をすることが日課になりつつある。
「京本さんは少し変わってますよ? もちろん良い意味で、ですけど」
「褒めてるのか褒めてないのかわかんない褒め方はやめてよ。ほら、もっとはっきり褒めて?」
大人の女性が、高校生に対して見せる仕草ではないであろう上目遣いでこちらを見つめる京本さんは、やっぱりちょっと変わってる。
からんからんからーん。
この音は、戦争の合図。
私たちと同様に今まで友人と話していた者、スマートフォンに目を落としていた者、他の売り場で時間を潰していた者、その誰もが皆同じような目の色に変わる。真っ赤に、燃え滾るのだ。