ぱしりっ。ぼこっ。とこんっ。
卵を掴む音、誰かの手とぶつかる音。
今まで並んでいたのは何だったのか、とタイムセールに初めて参加したときは感じた。先着順でないと不公平ではないか、と。
けれど、今ならわかる。皆楽しんでいるのだ。タイムセールの激安商品を見事手に入れたら喜び、手に入らなかったら悔しがる。そういう一喜一憂をここに訪れる主婦たちは一日一度の楽しみのように感じているようだ。
とはいえ、私は争いごとや競争が苦手で、このタイムセール争奪戦に負けることも多々ある。そんなときは、京本さんが横からすっと商品を差し出してくれる。
「あらあら、飛鳥ちゃんはまた負けちゃったの? もー、仕様がないなぁ、あたしの分をひとつあげるから」
お一人様二個まで、のタイムセールだったら、京本さんは必ずふたつ回収して、私が取り損なっていたら必ずひとつ分けてくれる。
「いつもいつもすみません。ありがたくいただきます」
京本さんは少し変だけど、誰よりも人情の厚い主婦だ。