はぁ…。 はぁ……。 ……。
バンッ! ガタッ!
私は何が起きたのか一瞬考えた。
「あっ……。」
先生と目が合う。
まさか先生の授業で眠りにつくとは…。
しかも悪夢を見るなんて……。
机に手をついた音と、立ち上がった時に椅子を引いてしまった音で皆が振り向く。
『授業中だ。前を向け。……お前も座れ。』
「はい。……すみません。」
あぁ。先生の授業で眠ってしまうなんて……。やってしまった。先生はすぐ減点しちゃうし…。
そんな事を考えていたらいつの間にか授業は終わった。
教室を後にして、大きな窓の大きな額縁に腰掛ける。
窓を開けて外側に足を出し、壁に寄りかかって目を瞑る。
ここはほとんどの生徒が来るのを避けている廊下だ。
人は来ないと思っていたが、遠くから足音が聴こえる。……聴こえたと思ったら、一瞬の静寂が訪れる。
かと思ったら、走って近づいてくる。
そう思っていたら、本当に後ろで止まった。
『何をしている??早まるな!落ち着け。』
先生の声がしたので目を開けて振り向く。
「先生……??なんの話?」
『いや……。今、そこから……。』
「うん。先生の早とちりだと思う……。飛び降りると思ったの?」
そう言いながら外に出していた足を廊下に戻す。
先生は安心したように肩を降ろす。
少し面白かったので笑ってみせた。
「早とちり先生、ここ、座る??」
そう言うと、また外側に足を出す。
「先生。ごめんね。授業中、寝ちゃって。」
『そんな事は正直どうでもいい。何かあったか?君が悩んでいるならそっちの方が重要だ。』
「ふふふ。ありがとう。でもね、別に悩みがある訳じゃないの。」
『悪い夢でもみたか?』
「うん。………ねぇ先生。1つ質問してもいい?」
『あぁ。何だ?』
「先生はさ、何処にも行かないよね?」
先生は少し悟ったようだった。
『何を言っているんだ?今もこうして君の側にいるじゃないか。』
そう言って微笑んだ。
その笑顔を見たら、悪夢の話なんてできなかった。
先生は多分、悟れてない。
私は夢の中で少しずつ遠ざかっていく先生を見た。
暗闇の中へ突き進み遠ざかっていく先生を。
私は本当にそうなってしまわないように、
先生のローブをそっと、けれども強く握りしめた。