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幻獣学① ドラゴン

『幻獣』とは、一般に架空の存在とされる、実在の確定した動物とは大きく異なった性質を持つ動物のことだ。その中でも今回紹介するのは、幻獣の中の幻獣、キングオブ幻獣、ドラゴンだ。
ドラゴンは世界中に生息し、その姿形も種によって様々だ。しかし、大抵の場合、爬虫類の身体的特徴を備えている。
例えば西洋で多く語られるドラゴン。巨大な爬虫類の身体、皮膜の翼、角が生えている種もあり、伝承にある多くのものは、火の息、または毒の息を吐く。
他には、中国や日本に生息する、一般に『龍』と旧字体で書くことによって西洋のドラゴンと区別される種。複数の動物の身体的特徴を備え、空を飛ぶ際には竜巻や雲に乗る。天候を操作する能力を持ち、その体長は、天を覆うほどの巨体から、蚕の幼虫ほどの小ささまで、自在に変化する。
さて、先程『大抵の場合』と書いたが、もちろん例外がいる。
タラスク、と呼ばれるドラゴンだ。これは、硬い甲と長い尾を持ち、そしてこれこそがタラスク特有の特徴なのだが、獅子の頭部と脚を持っているのだ。しかも、脚は三対六本。
これらのような生き物など、いるわけが無い。そう簡単に否定することも出来ないのだ。
皆様ご存じの通り、かつてこの地球上には、彼らの如く巨大な爬虫類が存在したのだから。そう、『恐竜』である。恐竜は、急激な環境の変化に対応し切れずに絶滅した。しかし、ドラゴンはどうだ。身体に宿した炎は、氷河期に彼らを温め、その時代を乗り越えた彼らは、他の動物と同じように、進化、多様化を経て、何種類もが確認されるようになった。人間が現れて以降、その畏怖は信仰へと変わり、ドラゴンは神格的性質を手に入れ、その存在を確かなものとしたのだ。
しかし、神格を得たことが、彼らの存在をまた、不確かにもしたのだ。観測されない『神』を否定する現実主義が蔓延した結果、彼らの存在は、信仰に依存する故、それを失ったドラゴンの実在性は希薄になったのだ。

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