昔々あるところに、小さいながらもとても裕福な国がありました。その国の王様も、もちろんたいへんなお金持ちでした。どのくらいお金持ちかというと、国中の人が押しかけてきても大丈夫なくらいの大きなお屋敷と、庭師がなにを植えれば土地が埋まるのかと頭を悩ませるくらいの大きな庭と、別荘5つとを持っていて、着るものも、食べるものも、何もかもが最上級のものばかりで、それでもなお、金と銀がお屋敷から溢れかえるほどでした。そしてその金や銀は、あと100年はなくならないだろうと言われるほど多かったのです。
さて、そんな大金持ちの王様には、1人のお妃様と、3人の娘がおりました。娘たちはそれぞれ長女をローズ、次女をリズ、三女をリリーといいます。 ローズとリリーはとても気が強くて、おしゃれが大好きでした。2人は、いつも自分が1番美しいと信じていました。けれど2番目のリズは、勉強が大好きでおしゃれなんて、てんで興味がありませんでした 。リズは毎日、お父さまがつけてくださった世界で指折りの家庭教師のもとで、勉強に明け暮れていました。
そんなリズを、姉のローズと妹のリリーは馬鹿にしていました。2人は毎晩ばっちりお化粧をして、きれいな服を着て、パーティーに出かけていきました。お母さまも、リズがあまりにもおしゃれに興味を示さないので、心配していました。このころは、若い女性はきれいにおめかしして着飾って、素敵な、家柄のいい男性と結婚するのが、上流階級のきまりだったのです。女性が勉強をすることは、望まれていなかったのでした。そうして、リズを姉や妹が馬鹿にし、お母さまが心配しても、お父さまだけは、なにもいいませんでした。そしてリズも、お父さまを1番に信頼し、お父さまが口うるさく言わないのを嬉しく思っていました。