「__サンタなんているわけがない。馬鹿にしやがって。」
苛々しながらこんなことを言っているのは、高校一年生の結城碧(ゆうきあおい)だ。十二月も下旬になり、世の中はクリスマス一色。お正月が廃れて見えてしまう程に。
この碧だが、様々なことが重なりに重なって苛々が募り、そのまま帰宅したのである。もちろん、原因はクリスマスに関係しているのだが、一概にそれだけとも言い切れなかった。
碧はこの春、いわゆる進学校に合格した。人並みか、それ以上の実力はあったし、自分でもそれに見合うだけの努力をしてきたという自負がある。部活動にも所属していて、彼は剣道部だ。小学生の頃から続けているそれは、全県でもトップクラスで、碧は大会の常連だった。高校でも、勉強と部活を両立し、充実した生活を送れるものだと思っていた。
しかし、冷静に考えれば、限りなく不可能であると分かった。
まず、通学時間が片道で一時間。しかも碧は電車で通っているため、時間の自由がきかない。そして、部活では朝練があり、帰りは夜10時を過ぎる。それから夜ご飯やお風呂だ。物理的に、勉強出来る時間も限られてくる。こんな生活を送っていたら、授業では寝てしまい、部活も真剣に取り組めず、家に帰ったら寝るだけとなり、いつの間にか、勉強も部活も上手くいかなくなっていた。
続く