“ねぇ。”
声を掛けられた気がしたので振り返ると女子生徒が立っていた。
「何でしょうか?」
“貴女、先生と仲良いわよね?”
「そうですが、何か?」
“先生との居残り授業をセッティングして欲しいの。”
「それ、私に何かメリットあります?」
“貴女も居残り授業に参加していいわ。今日の放課後ね。私達の教室で。それじゃあ、よろしく。”
そう言うと、女子生徒の塊に加わり消えていった。
とりあえず、先生を探しに行き見つけた。
「先生、貴方に居残り授業をして欲しいって言う生徒がいるわよ。何故か私もありで。今日の放課後空いてる?」
『空いている。……君は今、怒ってるか?』
「怒ってないわ。」
『じゃあ私との居残りは嫌か?』
「まさか。それはないわ。」
『じゃあ何故そんなムッとした顔をしている?』
「私に頼んだのは女よ?女!!自分で来ればいいのに。」
『そんな事で怒っているのか?』
「そんな事で悪かったわね!」
『君はその生徒のお陰で私に会えたのだからいいではないか。』
そう言うと、私にバックハグをする。
「先生、その手には乗らないわよ。」
先生がよくやる“賄賂”を渡す方法だ。
『バレたか?』 「バレバレ。」
そう言うと先生の手を取り、手のひらを出させる。
「チョコがある。賄賂は受け取らないわよ?」
『すまない、すまない(笑) ただ放課後は暇だ。』
「わかったわ。じゃあ、そう伝えておくわね。」
『君も来るのだろう?また後でな。』
「えぇ。また後でね。」
︙
その日の放課後はもう最悪だった。
他の生徒がいるから、先生はいつもの“イジワル先生”になるし、「先生、ちょっとイジワルしすぎじゃない?」と言おうとすると隣の席からどつかれるし、先生から『君はどう思う?』と聞かれる度に足を踏まれた。
何の為の居残り授業かわからないまま授業は終わった。
その日、私はすぐに部屋に戻り、誰とも話さず寝る事にした。
先生がまた少し遠くなった気がした。